
1月末に国内投入が発表された、スズキ・ジムニーの5ドアモデル「ジムニーノマド」。4月3日の発売を目指すなか、発表から4日で約5万台もの注文が入り、早くも受注停止状態に。5ドアモデルは2023年からインド工場で生産されており、グローバルモデルとして販売。今回の日本市場投入は、なんと101か国目となる。

初代ジムニーは1970年に登場。これまで199の国と地域で約350万台が販売されてきた。優れた悪路走破性がハンターや林業業者から高い評価を受けていることは当然だか、特に現行モデルは、機能性を重視したデザインが世界的に好評を得ている。この愛らしいルックスとコンパクトなサイズ、そしてカスタムなどの魅力が、多くのシティユース層からも人気を集めている。しかしこれまで、「5ドアがあれば我が家でも買うのに…」というファミリーの願いは叶っていなかった。今回の注文殺到の内訳は不明だが、UOMO世代をはじめとするファミリー層が多くを占めていると考えられる。「現に5ドアを望む声は、日本だけでなく世界中であがっていました」とスズキの関係者は話す。また、現行モデルが5ドア化しやすいクラシカルな機能的デザインであることも、実現に大きく関係しているだろう。

日本仕様車には仏語で遊牧民を意味する「ノマド」という名前が与えられた。これは、かつてスズキから販売されていたSUV、エスクードの5ドアモデルに採用された名前でもある。「沢山の荷物を収容できて、もっと遠くへ、もっと自由に、移動の可能性を広げてくれる」。そんな時間と場所にとらわれない、遊牧民のようなクルマという思いが込められている。

5ドア化にあたって全長は340mm伸ばされ、快適に座れる後席スペースを確保。乗り降りのしやすさや、長時間乗車した際の快適性にもこだわって設計された。後席はヒップポイントが高く前方視界もよく、一段階ではあるがシートリクライニング機能もある。実際に177cmある私が座った場合、広々快適とまではいかないが、窮屈に感じることはなかった。

そしてジムニーノマドは快適性も向上している。4速AT車には長距離ドライブで疲労を軽減してくれるACCが備わり、衝突被害軽減ブレーキや後退時ブレーキサポート、後方誤発信抑制機能などの安全装備も加わっている。また、サスペンションは乗り心地重視の味付けにしつつも、タフな悪路走破性能を両立。全車パートタイム4WDで、最低地上高はシエラと同じく210mm。昨今のファッション指向のSUVとは比較にならない性能を有している。

気になる価格は、5速MT車で265万1000円、4速AT車で275万円とリーズナブル。1.5Lの4気筒エンジンをはじめ、基本的なメカニズムは現行ジムニーシエラと同じだ。正直いってここまでのオフロード性能は街乗りで必要ないし、快適に移動するならば他のSUVの方がオススメだ。しかし、現行ジムニーシリーズは、このデザインが高く評価されている。ダイバーズウォッチやミリタリージャケットをファッションアイテムとして愛用するような高揚感。5ドア化によって利便性が高くなったジムニーノマドは、これまで以上に多くのファミリー層に、ファッションアイテムとして勧められるモデルになったのだ。