2025.04.23
最終更新日:2025.04.23

【ボルボ新型XC90試乗記】コペンハーゲン、そして東京で。最新のボルボに癒される

ボルボXC90

ボルボの最上級SUVであるXC90に初めて乗ったのは、確か日本デビュー直後の2016年のこと。ドイツ車やフランス車とは一線を画すクリーンなスカンジナビアン・デザイン、胸躍るようなわかりやすい刺激はないかわりに、穏やかな気持ちでクルージングしたくなる癒し系の乗り味。レザーとウッドパネルを効果的に使った明るいインテリア。すべてが当時所有していたクルマと真逆で、ちょうど40歳になろうとしていた自分にとって、「もういい大人だし、これからはこういうビッグSUVもありだな」と思わせるきっかけとなった一台だった。その後自分はXC90ではないが、某英国メーカーの3列シートのSUVを購入することとなる。

そんなXC90は、デビューから10年が経過した現在もボルボのフラッグシップとして君臨している。しかも驚くことに、売れ行きはデビュー当初とさほど変わらないペースらしく、この10年間、常に安定した人気と存在感を保ち続けている。それだけ、もともとのデザインコンセプトやパッケージングが優れていた証しだろう。XC90は現行のXC60、XC40に連なる新生ボルボのデザインコンセプトを最初に採用したクルマだが、他のモデルと比べてもやっぱりXC90が一番かっこいいと思う。

とはいえ、10年経つしそろそろモデルチェンジかな…と思いきや、ここにきて想定外のビッグマイナーチェンジを受け、びっくりするくらいの進化を遂げたという。ひさしぶりの再会となったこの名車の最新モデルを、北欧と日本、まったく異なるふたつの環境で体験した。

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最初に訪れたのはコペンハーゲン。空港の駐車場で対面したXC90は、見慣れているはずなのに、なんだかものすごくカッコいい。斜線が重なりあうグラフィカルなフロントグリル、スリムになったトールハンマーヘッドライト、彫刻的なボンネット…より現代的でダイナミック、そしてわずかにアグレッシヴに進化したエクステリアは、10年の時の流れをしっかり感じさせる。それにしても、日本で見るより数倍カッコよく見えるのは何故だろう?  おそらく、街の風景が違うせいだ。ここは言うなればボルボのホーム。建物も、道も、街路樹も、空の色も、すべてがクルマと調和している。インテリアだって進化した。ダッシュボードの形状、テキスタイル・パネルとウッドパネルの組み合わせはより上質なものに。もちろん、センスのいいリビングルームでくつろいでいるかのような感覚は健在。ちなみにセンターディスプレイは9インチから11.2インチへと大型化し、操作性と視認性がともに向上している。

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海のそばに位置するコペンハーゲン空港を出発すると、すぐにコペンハーゲンとスウェーデンのマルメを結ぶ海峡連絡道「オーレスン/リンク」を渡って、あっという間に隣国へ。目的地は、世界的に注目されているミシュラン2つ星のオーベルジュ「VYN」だ。牧草地に囲まれた高速道路を駆け抜け、洒落た平屋が並ぶ住宅街を通り、気づけばいつのまにか海岸沿いの田舎道へ。もちろん海岸沿いと言っても、カリフォルニアのような太陽の光が燦々と降り注ぐビーチサイドではない。ここは冬のスウェーデン。冬の日本海以上に海は荒れ、空は鉛色。風は強く、雨も降ってきた。でも、不思議と気分は沈まない。温かみのあるベージュの内装、美しい音色を奏でるオーディオシステム、包み込まれるようなゆったりした乗り味。厳しい北欧の冬を乗り切るのに、ボルボも一役買っているんだな、と合点がいった。ボルボというと、とにもかくにも「安全性」がフィーチャーされることが多いが、ドライバーが健やかな気分で「安心して」運転できるからこそ、「安全」なのだということがよくわかる。極めてヘルシーなクルマということだ。

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厳冬のスカンジナビアの大地からインスパイアされたVYNの料理を堪能した翌日は、再び荒天の中コペンハーゲンへ戻り、一路日本へ。弾丸スケジュールかつロングドライブだったが、ボルボのおかげで大して疲れることもなく帰国したのだった。

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それからしばらくして、日本上陸のタイミングに合わせて東京の街で再びXC90と対面した。先ほど、XC90 のエクステリアがわずかにアグレッシヴになったと書いたが、東京で見るXC90 からそういった印象は微塵もうけない。東京という、高層ビルが林立し、押し出しの強いクルマが走りまくっている環境では印象が変わるのは当然だろう。ずっと控えめに見える。

さて、決してクルマを気持ちよく走らせるのに向いているとは言えない東京で乗るXC90は、果たしてどんな表情を見せてくれるのか。午後の限られた時間で目指したのは、東京都の端っこ、和泉多摩川にあるショップ「Steep Grade Sharp Curves」。都内だとおそらくここでしか買うことのできない、愛媛県八幡浜産のみかんジュースが入荷したと聞いたので、行ってみることにした。渋谷から用賀まで首都高に乗り、その後は世田谷通りへ。平日の午後で渋滞こそしていないものの、決して爽快なドライブとはいえない。ストップ&ゴーを繰り返しながら、常に時速40〜50キロくらいで流れる感じ。自分のクルマであればかなりストレスを感じるドライブだが、さすがはXC90、ちっとも苦痛じゃなかった。ちなみに青山から和泉多摩川まで、ほとんどハイブリッドモードのみで走行。そして荒天のスウェーデンで実感したXC90の「癒し力」は、ここ東京でも健在だった。道が狭く、クルマやバイクや電動自転車がたくさん走っている街での運転は常にストレスを伴うが、終始穏やかな気持ちで往復約30キロのドライブを終えることができた。

結論。仕事もプライベートも何かと忙しい40歳男子、クルマの購入を検討しているなら絶対ボルボを候補に入れてほしい。もちろん小さいボルボでもいいけれど、包容力にあふれた余裕たっぷりのビッグSUV、XC90こそ、ぜひあなたの「ファースト・ボルボ」に。開放感、癒し、そして安心感。休日を満喫するのに必要な全ての要素が、このクルマにはあふれているのです。

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