高級感と後席の実用性も向上
千葉県木更津市のグランピング施設で、今秋に発売を控えるマツダの新型SUV「CX-80」をひと足先に見てきた。あらかじめ断っておくと、今回はあくまで撮影のみで、試乗できるのはもう少し先(現時点で価格も未公表)。だが、そのデザインとパッケージに触れるだけで、大人がファミリーカーに求めるかなりの要素を満たしてくれると思える一台だった。
CX-80は、人気を博した大型SUV「CX-8」の後継車種。CX-8が好評だった理由のひとつが3列シートで、CX-80もこのレイアウトを引き継いでいる。いっぽうでサイズはひとまわり大きくなり、全長×全幅×全高=4990×1890×1710mmとなっている。開発陣によると「日本の道路事情や駐車スペースを考慮して、全長は5m以下、全幅は1.9m以下にこだわった」という。つまり扱いやすさ、取り回しのよさに配慮しつつ、できる限りのスペースを確保したということだ。
デザインを統括したデザイン本部主査の玉谷聡さんは「外から見ても、乗車しても豊かさを感じられる造形を目指しました」と話す。マツダが標榜してきた「魂動デザイン」は、シュッと絞った意匠が特徴で、格好よさを優先してきた。けれどもCX-80は、広さ(=豊かさ)と格好よさを両立するエクステリアにチャレンジしたという。
具体的には、CX-8と比べると3列目シートの頭上空間が約30mm高くなっている。SUVの3列目シートにはエマージェンシー用の印象があるけれど、CX-80はシートのつくりがしっかりしていることもあって実用的だ。
2列目シートの広さは圧倒的で、こちらもCX-8に比べると頭上空間が8mm高くなり、横幅が103mmも広くなっている。CX-80のシートレイアウトは、前から2・2・2の乗車定員6名の仕様と、2・3・2の7名仕様がある。前者を選べばショーファーカーとして使ってもいいのではないかと思えるほど余裕がある。
乗り込んで感じるのは、インテリアの質の高さ。会場にはいくつかのグレードが用意されていたが、上級グレードである「エクスクルーシブモダン」のナッパレザーシートの色艶や手触りは、ドイツ御三家と真っ向勝負できるほどレベルが高い。それでいながらドアの内張りなど、細部には“和モダン”な意匠も採り入れており、マツダならではといえる個性もしっかりと表現している。
最後に、クルマ好きな大人に響く大事な点に触れたい。
CX-80はCX-8の後継と書いたが、実はその成り立ちは大きく異なる。CX-8がエンジンを横置きするFF(前輪駆動)ベースであったのに対して、CX-80はエンジン縦置きのFR(後輪駆動)のレイアウトが元になっている。FFの技術がどれだけ進んでも世界の高級車は縦置きのFRが主流であり、CX-80は基本骨格からして贅沢といえる。もうひとつ、エンジンのダウンサイジング化が進むいま、希少とも言える3.3ℓの直列6気筒ディーゼルをラインナップしている点もまた贅沢だ。
エンジンはディーゼルと、ディーゼル+マイルドハイブリッド、そしてプラグインハイブリッドの3通り。内燃機関のよさを味わうか、モーター走行ができるプラグインハイブリッドで時代を先取りするか、悩ましくもある(駆動方式はFRとフルタイム4WD)。
友人や家族など、大切な人にくつろいでもらう室内空間と趣味のよいインテリア。ひとりで運転を楽しめる贅沢なレイアウト。雪道や悪路も苦にしないヘビーデューティさ…このクルマは一台で望みをかなえてくれる。一日も早く、その走りを試してみたい。