2024.12.12
最終更新日:2024.12.12

【おしゃれな大人のクルマ選び】「日本カー・オブ・ザ・イヤー」受賞。ホンダ・フリードは最強のコスパファミリーカーだった!

 毎年の「年グルマ」を決める「日本カー・オブ・ザ・イヤー」(COTY)の最終選考会が12月5日に開かれ、ホンダのコンパクトミニバン「フリード」が、今年を象徴する最も優秀なクルマに輝いた。

日本カー・オブ・ザ・イヤー

 賞の実行媒体の一員でもあるUOMO編集部からは、「なぜ今年はフリードなんですか?」という素朴な疑問が挙がった。フリードは今回で3世代目となる5ナンバーサイズ(一部グレードは3ナンバー)のコンパクトミニバンで、国内でも重宝する多人数用ファミリーカー。しかし、メインとなるコンセプトは先代と変わってない上、主な改良ポイントは内外装の質感アップと、新たなハイブリッドユニットの搭載くらいといえる。他にない斬新な切り口や技術トレンドを表したわけではない。

最終選考会
「日本カー・オブ・ザ・イヤー」は1980年から続く自動車の賞典で、『UOMO』を含む41の実行媒体と、59名の選考委員(自動車ジャーナリストなど識者)によって構成される。毎年30台前後のノミネート車から、選考委員による投票を経て「10ベストカー」が選出され、最終選考会で最も優秀な「イヤーカー」が選ばれる。
得点一覧を見る、司会のおぎやはぎと加藤哲也実行委員長
得点一覧を見る、司会のおぎやはぎと加藤哲也実行委員長。「ファミリーカーでも走りっぷりを諦めなくていい。ユーティリティの高さとドライビングの楽しさを両立できるクルマ」と加藤委員長もフリードに太鼓判を押していた。

 それに比べて最終選考会に残った10ベストカーを見ると、インドで20万台超のヒットを誇るスズキのSUV「フロンクス」、ファッション&アウトドア業界からも人気の「ランドクルーザー250」、アジア市場から導入されたピックアップの三菱「トライトン」、中国のBYD「シール」、韓国のヒョンデが送るスポーツモデル「アイオニック 5 N」、そして約10年ぶりに一新してEVも加わったミニ「クーパー」、ボルボ初のピュアEV「EX30」などキャラが強いクルマが揃っていた。その中で、フリードは正直地味といえる。では、何が日本市場で売られるクルマとして評価されたのか。

11月下旬に袖ケ浦フォレストレースウェイで開かれた「10ベストカー試乗会」
11月下旬に袖ケ浦フォレストレースウェイで開かれた「10ベストカー試乗会」での一コマ。選考委員はここで各車に試乗して、最終選考の投票に移る。

 大きくは実用性と価格だ。フリードは日本市場専用に造られていて、ミニバンながら5ナンバーサイズで3列シートを実現。いまどき日本市場向けに作って売れるクルマは、軽を除いてほぼ皆無。逆に言うと、他のクルマはすべてグローバルカーで、日本はもちろん、北米やヨーロッパ、中南米でも売られている、ある種の八方美人。そんななか、日本市場のファミリー層のみを考えて造った点が評価できる。

 また、全長4.3m×全幅1.7mというサイズは本当に使いやすく、例えばグローバル戦略車のトヨタ・ヤリスクロスは全幅1.7mをゆうに超える。このサイズだけでも日本の生活者にとっては本当にありがたいのだ。

3列シート

 そして3代目は、全長をほぼ数cmしか伸ばさずに大人が普通に最大7人乗れる空間を生み出した。かつてないほど内装の質は高く、2列目にいたってはキャプテンシートとなり、後部座席天井にもクーラーが備わる。2WDと4WDから選べて、新・ホンダ流シリーズハイブリッドの「e:HEV」は、滑らかなだけでなく今まで以上に燃費もいい。外装デザインは凝った造形ではないが、シンプルかつフレンドリーで洒落ている。また、アウトドア好きにはクロスターというグレードがあるのも嬉しい。

インパネ
力強いフロントフェイスに、オーバーフェンダーなどでギアっぽさが漂うフリード クロスター。純正オプションのアウトドア装備も充実している。

 オプション装備やe:HEV仕様車を選べば300万円を超えるが、スタート価格は約250万円で、今回の中ではスズキ・フロンクスの254万円と並んでダントツにお買い得。ミニバンはちょっと…というお洒落なファミリー層にも受け入れられるデザインとコストパフォーマンスだ。本当に日本市場らしい、象徴的な今年の新車。

 一見地味に見えるかもしれない。しかし、多くのプロダクトが世界共通となり、どことなく大味になりつつある今、「日本人による日本人向けの日本人が作ったファミリーカー」として、これ以上のモノはないと言っていい。

 そこが問答無用に素晴らしいのである。

モータージャーナリスト
小沢コージ

自動車メーカーエンジニア、雑誌「NAVI」を経て現在も多数の雑誌で活躍。またTBSラジオ、webCG、経済系のWebサイト、YouTubeチャンネル「KozziTV」で連載をもつ。愛車は軽からキャンピングカーまで幅広く経験。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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