2022.12.01
最終更新日:2024.03.08

【大人のムダ毛を考える連載「新・脱毛論 “おい、濃い毛!”」スタート】 第一回「思い立ったら脱毛。何歳でも遅くない」

いま大人が一番気にしなくちゃいけないことって? それは「毛」だ! 必要なのはどの毛がムダなのかを見極める目。そして抜く勇気。上から下まで、それぞれの「濃い毛」と真剣に向き合うウェブ脱毛連載がスタート。

【大人のムダ毛を考える連載「新・脱毛論 の画像_1

近年確かなムーブメントになりつつある脱毛。単なる身だしなみの枠を超え、コロナ禍ではライフスタイルの一つとして選択する人も多い。アンダー、脇、すね、ひげ。それぞれの「濃い毛」「気になる毛」と決別した人々が私たちの身近に実は多く存在する。部下や知人たちがすでに脱毛経験者となり、さらに自身の老後を見据えて脱毛を真剣に考え出した編集長・山崎。だが、いまいち踏み切れないのは、旧態依然とした考えがしみついているからか。いま果たして脱毛をする意味があるのか。脱毛の先人たちは何を教えてくれるのか。これは、不惑をとうにすぎた中年男性が「濃い毛」と向き合い、脱毛に足を踏み入れるドキュメンタリーである。


第1回メンバー

M 村上要
(WWD編集長・脱毛済)
K キンマサタカ
(本連載担当のエディター・脱毛済)
Y 山崎貴之
(UOMO ブランド統括・WEB UOMO編集長・脱毛未経験)


初回ゲストはファッション業界メディア
「WWDJAPAN」編集長の村上要さん

教えて脱毛パイセン。

村上要さん(WWD編集長・無毛) と 山崎貴之(UOMO ブランド統括・WEB UOMO編集長・有毛)

本日のホスト山崎(左)とWWD村上要氏(右)

<かつて毛は成熟した男の証だった>

キン(以下K) 満を持して始まった脱毛企画。初回は山崎編集長とも古くから親交がある村上さんをお招きしました。

村上(以下M) こんにちは村上要です。自分は数年前にVIOの脱毛を始め、いわゆるアンダーヘアは一部残している状態です。

山崎(以下Y) そもそも、この企画を始めることにしたのは、僕が3ヶ月くらい前に脱毛の話を身近に感じたから。知り合いが入院したときに、「清拭するとき楽なんですよ」と看護師さんに勧められたんだって。彼は40代なんだけど、遠くない未来、自分が介護されることがリアルになったらしく、「脱毛ってどう思う?」と相談されて、僕も真剣に考えるようになったんです。

村上要さんの脱毛プロファイリング

村上要さんの無毛プロファイリング

K ということで脱毛経験者の代表として、村上さんにお越しいただいたのですが、ぶっちゃけ脱毛してどうですか。なにか変わったことはありますか?

M 僕は都内の移動はどこでも自転車なんですけど、毛を巻き込まなくなりましたね。快適です。

K それはよかった(笑)。

Y やっぱりなくなってから、ムダ毛の邪魔さに気がついたりするのかな。

M 最初にひとつだけ言いたいのは、「ムダ毛」という表現を使いがちですが、いろんな考えがあっていいと思うんです。体毛は男らしさと捉えている人もいます。人それぞれの価値観があるはずだから、「ムダ毛」というプロパガンダには違和感を覚えます。まあ、僕はムダだと思っているんで、面倒で邪魔だったなと思います。

K 毛を個性と捉えている人もいる、ということですね。

Y 介護されるという話が出てきたけど、赤子のおむつをきれいにしているときに、この子に毛があったら大変だろうって思うよね。

K それは脱毛のリアルな利点ですよね。若い人はヒゲ脱毛が人気だと聞きました。剃るのが面倒だからって。

M 僕もきっかけはヒゲ剃りでした。毎日を剃るのが面倒臭いし、不器用だから血が出ることもあった。自分にはなんの生産性もない楽しくもない行動なんです。剃刀だって高くもないけど安くもない。だったら脱毛をするかって。前にレーシックをやったんですが、コンタクトを入れる手間とコストが減る。安くない投資だけど、いつか損益分岐点がくるはずだと思ってからは早かったですね。

K でもヒゲはファッションとして活用できる場合もありますよね。

M それはきれいに生える人ならそうかもしれないけど、僕は口の周りにすこしだけ生えるだけでしたから。

Y ひげをなくすのは自分的にはさみしいなあ。

K ある意味で男性らしさの一つの表現でもありますよね。

Y ひげも下の毛も、毛がないことのデメリットってあるのかな。

M 銭湯にいくとジロジロ見られるくらいでしょうか。

K 「えっ」て顔で、視線が股間から上に行くんですよね。わかるなあ。

Y 毛がなくなると、野生が失われたりしないのかな。ライオンのタテガミがないような気分。

M 既成概念かもしれないけど、たしかに男らしさを表しているかもしれないですね。

Y ないと、少年ぽくならない?

M たしかに見た感じの貫禄は薄れるかもしれない。

K 子供のと同一視しちゃってタブー的なイメージを抱く人が多いのかもしれませんね。

Y その点では、まだまだ一般的とは言えないのかも。

村上要さんの自転車移動

毎日の移動は自転車が基本。脱毛してから毛を巻き込まなくなった


<脱毛は大変?コストに時間>

Y 村上くんが処理を始めたのはいつのこと?

K 7〜8年前ですね。きっかけは、床に毛が落ちているのがストレスだったから。ときどき本に挟まっていたりするじゃないですか。

Y あいつらの機動力ときたらびっくりするよね。うちは毎日ダイソンの掃除機を執拗にかけてます。

M 脱毛を意識した当初はレーザーをやる勇気がなくて、ブラジリアンワックスを2ヶ月に1回やってました。剃るよりもすごく綺麗に仕上がるんです。

K でも生えてくる。きりがないし、らちがあかない。

M そこから機械を買って自宅でするようになりました。でも、これもまた終わりが見えないのと、特に自分でVIOまわりに光を当てる行為が面倒でした。

K わかります。あの体勢がね……。

M 特にOがつらい。鏡の前で一人でやっているときにふと冷静になるとつらい。

村上要さん(WWD編集長・無毛)

「それまでの努力が功を奏して安上がりに脱毛できた」(村上)

Y それで最終的にサロンにいったわけですね。いくらかかったの?

M それまでいろいろ努力をしてたから、最初からかなり薄かったんです。計4回の施術でトータル3万円くらい。

Y 3万円は安い。

K 一般的には10万円前後とされているようです。

M 最近のサロンの機械はすごくいいですよ。冷やして照射するから痛くない。技術は格段に進歩しています。

Y なんだか気になってきたな。痛くないのは魅力的。

M やるなら今すぐ行った方がいいです。なぜなら、レーシックと一緒で、年齢に制限があるから。白髪になると、レーザーが打てなくなります。

Y ちなみに脱毛した人同士で意気投合することはあるの?

M 銭湯で隣の人が同志だと、「ゆくゆくは我々がメジャーだよね」って心の中で思いますね。

Y パートナーには脱毛してほしいという希望はある?

M う〜ん。どっちでもいいけど、できれば脱毛しててほしい。

K 清潔感もありますしね。昔はひかれることもありましたけど、今はだんだん理解が増えましたよね。

M 男性性を重んじる人もいますから。「毛がないのはダメ」という人もいるし、「あったほうがいい」という感覚の人もいる。自分の好きにすればいいと思います。

Y そういう議論ができるくらい身近な話題になったとも言えるね。


<脱毛はどれだけ広がっている?>

K 女性だとワキ脱毛はかなり一般的ですよね。いずれアンダーもそのうちそうなるのではないかと思います。昔はピアスを開けているだけでも、遊んでいると思われたらしいけど、今では普通じゃないですか。下の脱毛も過渡期にあると思います。

M やはり便利ですよ。ウォシュレットがあれば、最悪紙がなくて大丈夫ですし。

K ウォシュレットやって一回拭いて終わり。

Y ウォシュレットがないトイレは、何度も拭いても終わらないんだけど。だんだん毛筆がかすれていくように薄くなっていく。

K リアルな表現やめてください(笑)。

山崎貴之(UOMO ブランド統括・WEB UOMO編集長・有毛)

「残す毛の形状にもこだわる人が多いと知り驚いた」(山崎)

Y この場では、毛がある俺がマイノリティ。そういう時代なのかもしれない。でも、今さらやるのも抵抗あるんだよね。

M 思い立ったらすればいい。何歳でも遅くないです。

K 10代半ばで毛が生えはじめて、長い時間を一緒に過ごしましたけど、下の毛を懐かしむことはないです。髪の毛はなくなったら寂しいけど。

M 体毛は50歳を超えたらまた濃くなる人もいるそうです。男性ホルモンの分泌が増える人も多いそうで。やるならいまかもしれません。

K オシャレ界隈の脱毛事情はどうなっているのでしょう。

M 若い子のほうが、体毛については前向きかもしれませんね。マーケットでも、どんどん新商品が投下されています。

K 除毛クリームも脱毛器もユニセックス商品が増えている。

M 昔ながらの男らしさが形骸化していることも影響しています。ホモソーシャル的な、とくにVの部分はあるべきっていうカルチャー以外のスタンスも当たり前になっている。自分らしさという文脈が台頭してますよね。

Y だったらどんどん推進される可能性がある。

M 濃い体毛はかつて男性らしさの象徴。今はそうじゃなくてもいいよねというムードなのかな?

Y 俺の毛は、多様性という文脈の中で生き残るということか。生やすということに、明確に意思を持つことが必要な時代になるかもしれない。

K あとはお金がかかるので、多少の経済的余裕の有無もある。

M 若い世代は体毛をムダ毛と言い切る広告に対して露骨に嫌悪感を示します。無駄かどうかは自分で決めますというスタンスは一貫していますね。

K それでも乳毛はいやですよね。

M 僕もすごいいやだ。僕はレーザーで取りました。

K 下の毛になると賛否あるのに、乳毛に関しては、みんなが邪魔だと思っている。

Y 鼻毛を個性で伸ばす人はいないもんね。下の毛もいつかそうなる可能性もあるのかもしれない。

笑っている村上要さん(WWD編集長・無毛)

「ムダ毛かどうかは自分で判断すればいい。でも乳毛は嫌だ」(村上)


<商品の進化が脱毛を促進する>

M 最近の商品は消費者目線でできているので、それも脱毛が加速する一因かもしれません。たとえば、脱毛器の代表的メーカーYA-MANの最新機種はお風呂でも使えます。

Y 防水機能ってそんなにすごいこと?

M その前まではお風呂場で使えなかったから、リビングでやってたんです。

K 風呂場でできるのは、本当に大きいと思います。

M 除毛クリームは肌の負担がないし、そこから試すのもいいですね。

Y 確かに、時間がかかる、コストがかかるという問題さえクリアできたら、かなりハードルが下がるね。

K どんどんやりましょう。

M 最初は「少し残そうかな」と思ってもだんだんエスカレートしますよ。筋トレしているおじさんと一緒。

K 気がついたら周りの人たちみんな毛がなくなっていたり。誰かが絵を描いているのかもしれません。

Y それこそ陰謀論ならぬ陰毛論だね。うん。すごく興味が湧きました。


今回のまとめ

・アンダーヘアにこだわりを持つ人もいる
・「ムダ」な毛とは言い切れない
・脱毛マーケットは拡大している

山崎貴之

山崎「ファッション界も脱毛界も牽引する村上くんの言葉には説得力がありました」

次回へ続く。



illustration : Kazuya Madono
Photo & text : Masataka Kin

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