
20年前、メディアでスポットライトを浴びていた20代の美容師たちは40代になった今も変わらず…いやむしろ、今が人生でいちばんかっこいい。そんな噂の真相を確かめに、ちょっと落ち着いた!?彼らに会ってきた。秘訣は美容や服にとどまらず、理想の人物像にまで及んだ。
「年齢とともに変化したのはヘアよりもファッションでした」

表参道の1店舗に14年勤めて独立し、中目黒「いつくし」、東日本橋「そそ」と現在2店舗のオーナー。そして2児のパパ。
20代

30代

40代

20代から玄人好みなスタイルで各誌のヘアスナップ常連として多くのフォロワーを生み、現在は2店舗のオーナーを務める才田さん。ヘアスタイルの方向性は変わらず、ファッションで時代に合わせたチューニングをしている。
「18歳で東京に出てきて衝撃を受けたのは、とにかく抜け感を出すのがうまい人たちの多さ。地元では服好きで通っていたつもりが、入学式にコム デ ギャルソンのスーツを気張って着て行くと、周りにはスカーフを胸元にさりげなく挿している人や、ジーンズで礼装をカジュアルダウンしている人。その気負わないスタイルに憧れました。一方で『ミスターハイファッション』のような雑誌やラグジュアリーブランドのルックを見ながらヘアとファッションの関係性にも注目するようになりました。もともとダーク・ショーンベルガー、ステファン シュナイダーのようなブランドに夢中で、アントワープ系も盛り上がっていた頃です。社会事象によって生まれる音楽、その音楽のテイストと親和性があるファッション、そのファッションの一部としての新しいヘアスタイル…という大きな流れでとらえるようになりました。ヘアは、ムーブメントの終着地点だと考えています。では、自分自身のヘアとファッションはどうすべきか?

というところで、若い頃は大人っぽく見られたかったし、やっぱり抜け感を重視していた。『BRIDGE』に入社した24歳の頃でもすでに落ち着いたヘアスタイル(左)でした。ファッションではマイケル・タピアのジャケットに頑張って手を出したり、バラクータ、ジョン スメドレーのようなシンプルでクラシックなものが好み。イヴ サンローランのアウターに古着のデニム(右)のような、デザイナーズブランドと古着のミックスも好きでした。

わりと自分の理想のスタイルが決まっていた中で『美容師なんだから一度くらい髪を染めてみては?』という先輩のアドバイスで金髪(左)になってみたのも一瞬のこと。結局は元の落ち着く髪型(右)に戻りました。家系的に若白髪で20代から白髪が交じっていたこともあって、狙いどおり?(笑)老けて見られることは多かったですね」

確かに、若かりし頃の写真が今と大差ない印象に見える才田さん。
「考え方が変わったのは30代後半になってから。若い頃は大人っぽくありたいけど、実際に年をとると逆の現象が起こり、若さが欲しくなる。ヘアスタイルはさほど変わらないものの、髪質は変わりますから、脂分や水分が少なくなっていく髪にはケアも必要だと思いました。

スタイリングはタンパク質と脂肪酸でヘアを補修してくれるCOCUUを使い、

エイジングケアに特化しているDEMI DOのスカルプエッセンス ブラックロジストも優秀。ちなみに残留感があってシャンプーに手間がかかるのは年齢的にもしんどいので水溶性のみを使います。

キメたいときはMODENICA ARTのグリース。スタイリング力がしっかりあるのに、さらりと落ちる。そんなヘアケア面に加え、ファッションでも新天地を求めた。これまでと同じクラシックな服を選ぶのでは若さのない『ただのおじさん』の枠に入ってしまうと気づいたからです(笑)。ある種、年齢と洋服が予定調和すぎて、『抜け感』ではなく『型にハマった人』になる感覚です。今日のエムズブラックの柄シャツのように色や柄に遊び心のあるものを積極的に取り入れ、印象のバランスを意識するようになったのが大きな変化でしたね」

そのファッションの変化には、才田さんの“おじさん論”が関係しているらしい。
「40代の男性像は『おじさん・おじさま・おっちゃん・おっさん』で分かれていると思いませんか? 僕がいちばん避けたいのは『おっさん』なんですが(笑)、かといってダンディな『おじさま』になれる自信はないし、そんな性格でもない。ただ普通の『おじさん』の枠に入りたくない気持ちもあるので、自分はチャーミングな『おっちゃん』を目指すと決めました。コンサバでも威圧感を与えるわけでもなく、愛嬌と親近感のあるキャラクターでありたい。20代から白髪交じりのヘアは変えようのない自分の一部になりきっていますから、目指す男性像のために洋服だけを変えたんです。インスタではAIにより決まった洋服しか見つけられなくなるので、ショップでの出会いと発見も大切。だからいまだにオンラインで買い物はいっさいしないですね」
雰囲気も感性もフレッシュな才田さんに、白髪との付き合い方も聞いた。
「白髪に黄みがあると清潔感が損なわれがち。気になる方は紫シャンプーで黄みを取るのがオススメ。白髪って正直、生かすか殺すかの二択なんです。一度、白髪染めで黒くすると、雪が降ったように白くなる生え際を、黒い部分と馴染ませるのは難しくなる。毎月の白髪染めを自分に課すことになります。それを踏まえ、グレーを割り切って楽しむか、黒に保つことを重視するか、理想の『おじさん像』で選ぶのがオススメですよ(笑)」