おしゃれな人からは、いい匂いがする。UOMOでお馴染みの3人がどう香りと向き合っているのか初めて明かす。その正体とは。
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日常生活を創る無印良品が作った香水に興味が湧いた
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無印良品
オードトワレ「零度世界」
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若い頃はつけていたものの、今では習慣がなく、香りといえば、自宅でフランスの老舗・シールトゥルドンのルームフレグランスを使っているくらいだという尾花さん。
「昔はラルフ ローレンの『ポロ スポーツ』とかエルメスの『ロカバール』といった香水をつけたこともあったし、肉体トレーニングを始める以前はリラックスを求めてエッセンシャルオイルにハマった時期もありました。海外とかだと、香水をつけて、それが体臭と組み合わさることで、自分らしさのアピールにもなったりするけど、そういう“味”みたいなものは、まだ無理に出さなくてもいいかなと思うし、味は出すものではなくて、勝手に出るものなので(笑)。空間はいいんですよ。香りから喚起されることってすごく多いと思うし、実際にミスターハリウッドの店舗ではサンタ・マリア・ノヴェッラのポプリをずっと使っているんですが、自分自身につける香りに関しては、そこまで興味がないんです」
そんな尾花さんだが、実は最近気になって購入した香水がある。
「無印良品の香水です。中国国内だけの展開みたいで、たまたま仕事で上海に行ったときに見かけて買いました。これがルームフレグランスだとしたら、日々の暮らしに寄り添うものだなってわかるんですけど、香水ってもうちょっと先にあるというか、嗜好性もあるし、すごくパーソナルなものじゃないですか。それを日常生活を創っている無印良品が、しかも日本ではなく、中国で展開していることが面白いなと思いました。全部で10種類くらいあったのかな。香りは想像以上にそれぞれちゃんと個性があって、その中から気に入ったものを3つ購入しました。丸いバルブアトマイザーの佇まいも珍しくて好きです。クラシックな雰囲気があって、プロダクトとしても美しい。インテリアとして置いておいてもいいし、ルームスプレーとして使ってもよさそうですね」
香水は金のジュエリーと同じくこの年齢だから似合うアクセサリー
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(右)BYREDO
パルファム「セリエ」
(左)Santa Maria Novella
オーデコロン「パチューリ」
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「40歳を過ぎてから香水をつけ始めました。それまでは本当に無関心でした」
レショップはじめ、さまざまなブランドや話題のショップを手がけるファッション業界のキーマンである金子さんは現在50歳。
「それまで自分の関心はひたすら洋服に注ぎ込んできたんですが、ファッションに香りが加わることで、もっとムードの幅が広がる気がしたんです。完全にアクセサリー感覚ですね。おじさんになって肌ツヤや色気が薄れると、何かで補完するのは自然な成り行き。枯れることでようやく金のジュエリーが似合ってくるように、香水を纏うことがいやらしくなくなると思うんです。だから“この匂いを嗅ぐと落ち着く”みたいなことではないんです」
最初に買ったのが、サンタ・マリア・ノヴェッラの「ポプリ」で、その後「パチューリ」(左)を買い足した。
「まずは歴史があるものをつけたいという気持ちがありました。匂いだけじゃなく、ブランドの背景まで気にして買うのは服や時計と変わらないです。めちゃくちゃかっこいいけど謎のメーカーのものは着られない、みたいな。男性の香水の入りとしては、そのくらいがいいと思っていて。匂いのよしあしを自分の嗅覚だけで判断し、それを振りまいて歩くなんて結構怖いこと。正解がわからないから鼻だけでなく頭で納得してつけたほうが安心できますよね。服はそこまで他人の目を気にしませんが(笑)、実は香りについては他人の鼻を気にしているんですよ。服は組み合わせで、香水はつける量でセンスが試されていると思っています」
そして半年ほど前にラインナップに加わったのが、バイレードの「セリエ」(右)だ。
「実は最近は直感的にぐっとくるコンテンポラリーな佇まいの香水にも思い切ってトライしてみたい気分。50mLで約4万5000円という価格に、所有欲を満たす今っぽい魅力を感じます」
撮影現場で疲れたとき「自分の空間」の香りに救われる
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(右)PERFUMER H
オードパルファム「スモーク」
(左)FIELE FRAGRANCES
オードパルファム「ジュニパラス」
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匂いに敏感で本誌企画で香水と服をコンビで提案したこともある池田さんは、毎朝、香水をつけるのが習慣になっている。
「きっかけは2年前にロンドン本店で購入したパフューマーH(右)。調香師のリン・ハリスさんは有名で、ショップもかっこいいと噂には聞いていました。膨大な種類の香りを試した中で『スモーク』にピンときた。名前のとおりスモーキーで空間の香りのような落ち着いた印象。例えばお香やパロサント、ポプリのようなニュアンスです。自分が匂いに敏感なこともあり『この人といえばこの香り』と印象づけるような強い香りは過剰に感じるし、人から『いい香りですね』と言っていただくと、ありがたいと思いつつも『バレてました?』と不安になる(笑)。この香りはさりげなさがちょうどよく、メジャーではないぶん匿名性もある。そのうえで、自分のイメージとかけ離れていないか、置いておいて嫌じゃないボトルデザインか…という繊細な好みのラインもクリアしました。気に入った洋服でも、どうしても細かなディテールで許せない部分があるのと同じで、香水も香りの要素やデザインに少しでも違和感があると落ち着きませんから」
そんな池田さんが香水をつける理由は自己アピールではなく安心感を得るためだった。
「長丁場の撮影現場で疲れたとき“自分の空間の香り”に救われる体験をしたことがあります。例えば撮影後に自分のクルマに戻って慣れ親しんだいつもの匂いに触れると、プライベートの空間に帰れてほっとしますよね。同様に、自分自身に戻れる香りが手首にあるのは幸せなことだと思ってからは、香水をつけるのが当然になりました。最近は季節で使い分けていて、夏にはフィエール フレグランスの『ジュニパラス』(左)を。香りのニュアンスは似ていますが、より軽さがあります」
Illustration:daimonion
Text:Masayuki Sawada(Mr.Obana) Takako Nagai(Mr.Ikeda)